
本誌特集「神道と庭」(P22~)で掲載されている春日大社「神庭」の造園設計・監修者の尼﨑博正氏。本書は氏のこれまでの主だった作品と論文がまとめられた集大成といえる1冊である。 A4ワイド版、ハードカバー、260頁を超える書籍としての重みは、造園界における氏の業績と重なる。住宅から社寺やホテルなどの商業施設まで、氏が手掛けた数々の庭園の印象的なシーンを切り取った作品は、写真集としても見応え十分である。
写真にはキャプションがほとんどなく、作品の解説も少ない。しかしその余白が読み手の想像を膨らませ、知らず知らずのうちに引き込まれていく。またそれらの作品は単に時系列に並んでいるわけではなく、業種のようなカテゴリー別でもない。作品のテーマを抽出して分類されており、そこに書籍のタイトルを『造園家 尼﨑博正の眼』とした理由があるのではないだろうか。
論文集の方は、七代目小川治兵衛の再評価のきっかけとなった書籍のはしがきや、煎茶と近代庭園に関する研究、また氏が長年関わってきた文化財庭園や石造美術品に関する論文が収載されている。研究者として氏が何に着目してきたのかを知ることができ、ここにも尼﨑博正の「眼」が感じられる。
文化財庭園に深く関わりながら、現代庭園を作庭する氏の「眼」は何を見てきたのか、何を見ているのか。その一端を垣間見られる本書に、氏が造園家として稀有な存在であるということと、日本の庭の奥深さを再認識させられた。
造園家 尼﨑博正の眼尼﨑博正=著
発行/建築資料研究社
定価/11,000円(税込)










