日本庭園を訪れた際に感じる感覚的な「何か」。その直感的に心に触れるものの正体を「つくり手」の視点から解釈するという、新しいアプローチで日本庭園を見つめる本書。著者はランドスケープアーキテクトの戸田芳樹氏と造園作家・庭園研究家の野村勘治氏。50年以上の付き合いがあるという2人の異なる視点から、古典庭園に込められた意図や背景を読み解いていく。作庭者が残した “つくり手の意思”を現代の読者へとつなげる。
本書は全4章で構成され、日本庭園に興味を持つ人々が、今知りたいと思う理論や知識を取り上げている。第1章は、龍安寺庭園の謎を解き明かすところから始まる。続く第2章では、「鶴亀石組」の象徴性やその空間的意味について掘り下げ、「かたち」だけにとどまらず、その奥に潜む意味や思想を分かりやすく解説。読者を深い考察の世界へと導く。第3章では小石川後楽園を取り上げ、「能の世界」「旅の風景」「中国への憧憬」という3つのテーマを通じて庭園の物語性を探る。庭園が景観のみにとどまらず、鑑賞者の知識量によって、多様な物語を引き出せる芸術であることが語られていく。そして第4章では、小堀遠州の生涯と作品に焦点を当て、現代を生きる私たちをも引きつけるその魅力と共感性を描き出す。
「庭園を歩きながら読んで欲しい」という本書の冒頭でつづられた著者の思い。その言葉に誘われるように、この一冊を携え、見えなかった「何か」が見え始める瞬間の喜びを味わいに、庭園へ足を運んでみてはいかがだろうか。
戸田芳樹、野村勘治=著
発行/風景パブリッシング
定価/1,980円(税込)