表紙最上部に「自宅に日本庭園をつくるためのガイド」と掲げているにもかかわらず、イントロダクションの見出しが「Don't Follow This Manual(このマニュアルに従うな)」なのは、どういうわけだろう!──読者はまず、そう驚くに違いない。
安諸定男の仕事を「マニュアル」として発刊したいとリクエストしたのは、共著者であるカリ氏であったようだ。2人の出会いは20年前まで遡る。多くの庭師に技術を伝えるため、全国で積極的に講習会を行う安諸氏の仕事ぶりを、文字や図面に残し、世界へ届けたいと考えたのだろうか。カリ氏の“想い”が、随所にあふれているように感じられる「マニュアル」だ。
掲載されている庭園は、東京・湯島天満宮庭園など一般公開されている作品から、個人邸の庭までさまざまだ。How toページのテーマは「編笠門」「待合の腰掛」「土橋」など本格的なもの。ステップごとの作業解説はもちろん、写真だけでなく、断面図や構造図も掲載されている。竹を使った手仕事や土塀の作業工程についても写真が掲載されており、資料としても活用できそうだ。
写真もふんだんに掲載されているが、その多くが庭園のディテールにフォーカスしたものである。図面を手がかりに、その有機的なつながりをイメージすることも本書の楽しみ方の一つかもしれない。
日本庭園を理解するための助けとして、専門用語が丁寧に解説されている。日常的に日本庭園に接し、身近に過ごしていると言葉にわざわざすることのない“当たり前”を、業界外の方、違う文化を背景に持つ方へ向けて説明する際の、ひとつの参考にもなりそうだ。
【庭NIWA 247号掲載】
安諸定男、ジョセフ・カリ=著
発行/チャールズ・イー・タトル出版
定価/2,860円(税込)