“自然環境の力”を借りたインフラの持続可能性『地域を強くする緑のデザイン』~グリーンインフラとまちづくり~

兵庫県立淡路景観園芸学校で行われた「ランドスケープからの地域経営」と題した連続公開セミナーの内容をまとめ、出版したのが本書だ。第一号のテ ーマは「グリーンインフラとまちづくり」。

“グリーンインフラ”とは、自然環境の構成要素である緑や水の力を活用しながら設計されたインフラシステムのこと。一般的に「インフラ事業」というと大規模な土木領域のことと思いがちだが、ここで紹介されている事例はどれも地域コミュニティで実践できる規模のものである。

新しい試みのようではあるが、日本は昔から降水量も多く、水による災害が多いため、雨水管理・治水については諸外国に先んじてグリーンインフラと方針を同じくする管理システムを実践している例もあるという。しかし一般的には、定量的な効果を求めコンクリートや鋼材などが多用された抑制型の管理が採用されていると言えるだろう。

本書では景観の改善や地域コミュニティの活性化等についてのグリーンインフラの有用性はもちろんのこと、第一義としてその「機能」の有用性や、「コストパフォーマンス」について実例が述べられているのが興味深い。グリーンインフラを実装することで、従来の管理システムに対しての負荷が減り、長期メンテナンスコストが削減された例なども紹介がある。「持続可能性」の現実的な実現手法を模索したい人にとって、最適なガイドとなりそうだ。
【庭NIWA 237号掲載】

〈ランドスケープからの地域経営1〉地域を強くする緑のデザイン~グリーンインフラとまちづくり~ 
中瀬勲=著 嶽山洋志、岩崎哲也=編
発行/神戸新聞総合出版センター
1,000円(税別)

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