人気が高まる多肉植物のエケベリア1000種を全て写真付きで紹介した図鑑。最近の多肉植物の流行により、新しい交配種の作出が盛んに行われ、それにより、別種に同じ名前が付けられるなど、市場が混乱している現状があるという。そうした状況に危機感を抱いたサボテン・多肉植物クリエーターの著者が正確な情報を整理した力作。愛好家待望の書となっている。
コラムとしてまとめられている日本におけるエケベリアの歴史も興味深い。明治期にもサボテン・多肉植物ブームがあり、一手に輸入販売していた松沢進之助がライバルを警戒し、原名・学名を伏せ、和名を付けて販売していたこと。昭和40年には世界に約160種、日本には約70種だったエケベリアが、現在は1000種紹介できるまでに増えたこと。多彩な色と形を持つエケベリアの背後にあるコレクターやプラントハンターたちの歴史ロマンを想像すると、趣深い。
【庭NIWA 225号掲載】
羽兼直行=著
発行/電波社
2,300円(税別)