庭2022年夏号No.247
連載-未来を植える人びと-第19回
取材・文=梶原博子


代々受け継がれてきた
仕立物の伝統を後世につなぐ

静岡県内トップの植木生産地・浜松市浜北エリア。80年にわたり、クロマツやゴヨウマツの仕立物の管理・育成を続けてきた伸松園を訪ね、若き4代目、小畑直也さんの植木生産にかける思いを聞いた。

 静岡県浜松市浜北地区は、昭和の初めから植木の生産が盛んに行われており、県内の造園家の重要な材料調達エリアとして知られる。今回訪れたのは、昭和7年に創業した伸松園で、4代目になる小畑直也さんが圃場を案内してくれた。
 伸松園は、直也さんの曽祖父が創業し、現在は代表取締役である父親の勝裕さんとともに、植木の生産と管理に当たっている。取材に訪れた2月初旬、最寄駅の浜北駅に降り立つと、よく晴れた快晴の空にちらちらと小さな雪が舞っていた。「このあたりでは“風花”っていうんですよ。浜松は太平洋側に面して温暖なので雪はほとんど積もりませんが、寒いこの季節は風花が舞うんです」と直也さんが教えてくれた。
 浜松市浜北の中で、とりわけ植木生産が盛んなのが、小林地区と新原地区だ。昔、天竜川の度重なる氾濫によって生まれた河岸段丘の段丘面上に位置する。土壌は乏水性で腐食含有量の多い黒ボク土という、いわゆる「やせた土」であるのが特徴だ。
 「実はこの『やせた土』が植木生産に適していて、根の先の細根が水分や養分を吸い上げるのですが、やせた土に苗木や木を植えると、少ない水分と栄養分を吸収しようと細根がよく発達するんです。良い細根は植木の移植がしやすく、どこに移植しても根付きやすいので、浜北の植木は評判を呼んで植木生産地として発展していったのです」と、社長の勝裕さんが教えてくれた。
 その後、2代目に当たる直也さんの祖父の時代は・・・記事の続きは、庭No.247の紙版・電子版で。

生垣用のイヌマキは、伸松園の主力商品のひとつ。近年、生垣の需要が少しずつ増えているといい、全国的に供給量が減っているイヌマキを求めて伸松園に県内外から注文が集まる。
伸松園の圃場で仕立て中のクロマツ。樹木は太陽に向かって枝葉を伸びていくが、シュロ縄で下方向に矯正することで、庭木として美しい樹形をつくる。
剪定して新しく出来た枝に細かくシュロ縄を固定して矯正する様子。成長を想像しながら引っ張る方向を判断しなければならないため、経験が物をいう作業だ。
昨年開催した圃場での遊び場イベントの様子。参加した子どもたちは、普段滅多にできない木登りを楽しんだ。
圃場の大木に縄を張ってブランコ遊びを楽しむ子どもたち。
真砂土の山も遊び場として好評だったという。
6:整枝前のラカンマキ。
6:原木を見てつくりたい形になるようにこさ打ちする。
6のラカンマキを矯正して1年経った様子。躍動感ある形に仕立てられた。
小畑直也(おばた・なおや)

小畑直也
おばた・なおや|1989年静岡県生まれ。2011年3月大学卒業。6年間他業種で就職。2019年伸松園入社。約1.8haの農場で、クロマツ、ゴヨウマツ、ラカンマキ、イヌマキなどの仕立物の育成と管理のほか、モミジやアオダオなどの庭木の卸売販売も行う。不定期で、地域の親子を対象に圃場を開放した遊び場イベントを実施。
有限会社伸松園(静岡県浜松市)

       【地図から探す植木生産者】

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