庭2018年夏号No.231
連載-未来を植える人びと-第3回
取材・文=梶原博子


庭を輝かせる名脇役 
山野草の魅力を伝えたい

小柄で素朴な草花で、鑑賞用としても愛好家が多い山野草。雑木の庭の下草としての需要が高まり、造園にも用いられている。愛知県稲沢市で約2000種の山野草を生産し、豊富な知識で造園家からの信頼も厚い横田知樹さんの農園を訪ねた。

横田さんを一言で表すとしたら、〝歩く山野草図鑑〟。それくらい詳しくて、下草に山野草を使う時、的確なアドバイスをくれるので頼りにしているんです」
 そう語るのは、愛知県稲沢市を拠点に活動する造園会社ランドスキップの溝口達也さんである。彼の案内で、2月に農園を訪れると「、ようこそいらっしゃいました」と満面の笑顔で、横田知樹さんが出迎えてくれた。
 「卸売り生産業は私で3代目になるのですが、うちには創業当時から屋号はないんですよ。このあたりは植木の産地だったことから、戦前に祖父の兄が植木屋を始めたのですが、戦死してしまった。そこで祖父がその後を継いで、バラの生産を始めたそうです」と横田さんは話す。

 仮想通貨に通じる 山野草ブームの強盛と衰退

稲沢市井堀地区は、全国的なバラと盆栽の生産地であり、横田家でもバラと並行して盆栽の材料を扱っていた。
 昭和50年代に入ると茶道ブームが起こり、・・・記事の続きは、庭No.231の紙版・電子版で。

冬の間、ビニールハウスの中で栽培されているトキワナルコユリのポット苗。
0_2 白や桃色の花をつけるカワラナデシコも人気の品種。
ハウス内で育てているシダのポット苗。グラウンドカバーも豊富に取り扱う。
盆栽用のモミジ。
白や桃色の花をつけるカワラナデシコも人気の品種。
5cm前後の大輪の花をつけ、庭のアクセントとして人気を集めるヤマシャクヤク。種を植えてから出荷まで7〜8年を要する。
5~7月にかけて白く可憐な花を咲かせる厚葉マイズルソウ。ハート型の葉は常緑で、植木の幹元に植えるとボリュームが出て森の中のような雰囲気を演出できる。
個性的な形の花が特徴のイカリソウ。高さは30~50cmで、細い茎の株立。花色は紫、白、ピンク、黄色がある。
庭の下草として人気の高い白色ミヤマオダマキ。
円錐状に近い鐘形の花が特徴のソバナ。花期は8月から9月。
四季咲きのヤマブキソウ。山地の樹陰に自生するケシ科の宿根草。この種は朝鮮半島原産
タマリュウに変わるグラウンドカバーとしての可能性を考え、ハウスで栽培実験中の中国原産のスゲの仲間。黒軸テンジクスゲの名で少量出回っている。
横田さんは気になる山野草があると、自宅や農園に種や苗を植えて、育つかどうか実験する。写真は2年前に植えたトキワナルコユリ。
横田知樹(よこた・ともき)

横田知樹
よこた・ともき|1978年愛知県生まれ。2002年岐阜大学大学院農学研究科修士課程修了。同年4月に家業である山野草、バラ、植木の卸売り販売業を継ぐ。稲沢市内の農園で約100種類のバラと約2000種類の山野草、植木の生産のほか、ミニ盆栽の販売を行う。庭植えのための山野草を幅広く取り扱う。


       【地図から探す植木生産者】

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