異ジャンルの視点で論じる京都別荘庭園『近代の政治家と京都の別荘庭園』琵琶湖疎水がむすぶ水脈と人脈

 本書は琵琶湖疏水を水源とする池泉庭園群の所有者、特に政治家に焦点を当てた一冊である。京都は実業家や政治家の別荘地として好まれており、庭園内には涼しげな流水を取り込むことを好んだ。その際に用いられたのが、琵琶湖疏水である。明治維新後の衰退した京都の復興のために琵琶湖疏水が整備され、その水は工業用水や水運などに用いられてきた。この水を庭園内に引き込む過程には、所有者をめぐる人間関係や当時の政治的情勢が色濃く影響している。

 従来、京都に存在する疎水の庭の所有者研究における対象は住友春翠や岩崎小彌太といった近代を代表する実業家に関するものであるのに対し、本書は政治家に焦点を当てているところに特異性がある。政治家によって営まれた庭の多くは早期に失われているが、微地形分析による旧河道・水路と池泉への利水状況を復元するなどの地理学的手法を援用することで、従来の研究成果にさらなる知見を加えることを目指した。

 著者の佐野静代氏(同志社大学文学部教授)は人文・社会科学分野の研究者であることから、庭園の構成や素材といった表面的な部分だけではなく、庭園造成にいたる過程から考察を行っている。佐野氏の専門分野は造園とは異なるものの、庭園は人が手を入れてつくり上げたものである。現代とは異なる環境のもと、政治家たちは庭園をどのようにとらえ利用していたのか。彼らの日常生活を想像しながら読みたい論考である。

【庭NIWA 264号掲載】

近代の政治家と京都の別荘庭園
佐野静代=著
発行/吉川弘文館
定価/5,500円(税込)

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