「緑の建築家」 “石井修”と、今、出会う『建築家・石井修 安住への挑戦』

挑戦的なモダニズム建築の一方で、石や樹木を多用し、地形に寄り添い、地中や草木に潜りこむような設計、施工で独自の世界観を構築し た建築家・石井修の作品集が本書だ。

その名を確固たるものにした「目神山の住宅」 シリーズを始め、住宅建築、商いのための建築、そして集合住宅と、多様な要望に応えた石 井修の作品が、写真と図面で多数収録されている。また、それぞれの建築解説のほとんどが、『住宅特集』『新建築』等に石井修自身が書いたテキストからの引用収載だ。

建築冒頭に「いまあなたが開いているのは、 建築家・石井修について考え始めるための書籍である」とあるが、まさに本書は、時を越えて読者を石井修“本人”に出会わせるために、注意深く編まれているように思う。

建築と執筆録がCDアルバムとライナーノーツだとしたら、設計事務所に所員として勤めた7人が一堂に会した巻末の座談会は、さながら「大物アーティストの歴代ツアースタッフたちが当時の舞台裏を語る」といった趣。実際の現場体験から垣間見える石井修の生々しい人間像には、ファンならずともニヤリとしてしまうだろう。

この本書のストイックな構成のコントラストは、本書刊行と時を同じくして開催された「石井 修 生誕100年記念展」にも貫かれていた。本誌 p130-131の記念展レポートでは、模型や建築 写真も掲載している。
【庭NIWA 250号掲載】

建築家・石井修 安住への挑戦 
倉方俊輔+石井修生誕100年記念展実行委員会=編著
発行/建築資料研究社
定価/3,850円(税込)

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