ランドスケープデザインを今ひとたび学ぶとなった、翻訳、著作含めて、宮城氏の書いたものをひとつも読んだことがない人はいないのではないか。ランドスケープデザイナーとしての仕事の他に、ランドスケープデザイナーとは何者なのか、ランドスケープとは何か、という問いに対して“言語”で答えを出す仕事を、ずっとされてきたように感じる。
欧米のアカデミックな方法論を身につけてきた著者は、建築、職能、エコロジー、都市、アーバンネイチャー、レリジエンス、サスティナビリティなどのキーワードを飛び回りながら、現代におけるランドスケープデザインの実際の設計プロセスや、具体事例に裏打ちされたトレンドの分析を、時代の変遷とともに明晰に語る。
一方で、実家が宇治平等院であるという宮城氏には、奈良時代からの「庭園文化」が身体感覚の深いところで流れ続けてきたはずだ。現在は平等院の代表役員という顔を持ち、また宇治で空き家の活用事業などで“地元”に深く関わる立場にいる。著者が、30年に渡る仕事を改めて定義しようと試みる時、敢えて“あいだ”という、たゆたうような感覚を想起させる言葉を用いていることも興味深い。
東西のプロトコルを自らの中で交差させてきた著者の、視線の先に今見る景色は、どんなものなのだろうか。今後の活動にも注目したい。
【庭NIWA 250号掲載】
宮城俊作=著
発行/鹿島出版会(SD選書)
定価/2,640円(税込)