巨石・奇岩・怪石・磐座「石巡礼」の旅路は続く『石の聲を聴け』

「何か特別な力が宿っている」「神が住まう場所」など、石は原初のアミニズム的信仰と結びついている。石は今でも人々の心に想起させる“何か”を持っており、世界中に巨石・奇岩・怪石がその姿を残している。このような石に魅せられ、日本と世界の石を巡る旅に四半世紀もの時を捧げ続けてきた写真家の、集大成ともいえる写真集が本書だ。

冒頭には著者の巨石との出会いがつづられている。琉球大学在学中の琉球信仰や祭りの撮影経験をきっかけに写真を学び、巨木や巨石を背景にしたセルフポートレート撮影を始めたこと。そして導かれるようにチベットやケルトへ旅したことをきっかけに「聖地には石がある」との確信を得ていく過程が生々しく語られている。

日本の写真は沖縄を起点に出雲まで、文字通り全国各地を巡って合計217カ所の巨石や巨木、神社や岩神、人の営みとしての祭りの風景など。日本における多様な信仰心や、人の営みを感じさせるものとなっている。

日本を離れ、世界を股に掛けた「石巡礼」は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米、北米、オセアニアを旅路として2009年に1年間をかけて実行された。アミニズムを濃厚に宿した巨石による聖地から、ピラミッド、嘆きの壁、ランドスケープアートまで、本書に収められている207枚の写真1枚1枚は、石と人との間に流れるストーリーが聞こえてくるような迫力ある画面構成となっている。
【庭NIWA 239号掲載】

石の聲を聴け 
須田郡司=著
発行/方丈堂出版
4,400円(税別)

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事