土地と気候を知り、生きもの目線でつくる庭『ポール・スミザーの「これからの庭」』

生態系を豊かにする庭づくり「ナチュラルガーデン」を提唱する著者が、実際につくった庭を紹介しながら、その哲学から実作業までを解説した本書。「植栽図鑑」と銘打った最終章では約90種類の植物について利用実例を詳述しており、調べやすい索引付き。実際に庭づくりをする人に向けて、知見を役立てて欲しいという思いが伝わるような構成だ。

著者がつくる庭は野趣に富み、バラをはじめ豊かな種々の花々が四季を彩る、多くの日本人が思い描く「イングリッシュガーデン」そのもので、出身や学びの背景を感じさせる。一方で、本書が「庭」「園芸」の書籍であるにも関わらず、著者が多くの「生きもの」に言及しているところは特徴的だ。

幼い頃から慣れ親しんだ友人たち──野鳥をはじめ、リス、トカゲ、カエル、ヘビ、チョウ、ハチ、アリ、カマキリ、テントウムシなど小さな虫たちの目線までも意識してつくる「庭」には、彼らが住み着きやすい工夫があちこちに散りばめられている。

“多様性”、“持続可能性”などのキーワードがさまざまな業種で話題になる昨今、足元に広がっている生きもの達の小宇宙について、改めて考えるきっかけとなりそうだ。
【庭NIWA 245号掲載】

ポール・スミザーの「これからの庭」 
ポール・スミザー=著
発行/主婦の友社
定価/1,760円(税込)

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