もともと、自然がもたらすリラックス効果は経験的には知られていたが、その生理的効果を科学的データにより裏付けたのが本書だ。森の中を歩行する森林セラピーによるリラックス効果や免疫機能改善、園芸セラピーによるストレス軽減効果などが実験データと共に明らかにされている。豊かな自然環境だけでなく、公園内の歩行や切り花を見る、香りを嗅ぐといった身近な自然に触れる行為でも、リラックス効果が現れるというのが興味深い。
人が自然に反応する理由について、著者は「今を生きる我々は自然体応用の体をもっており、人工化された現代社会においては、少なからずストレス状態にある。
(中略)自然由来の刺激に触れることにより、生理的リラックス状態がもたらされ、本来の『人としてのあるべき状態』に近づくのである」と説明する。
そうした予防医学的効果を自然セラピーと呼び、世界の自然セラピー研究の現状についても紹介している。
自然セラピーの科学 予防医学的効果の検証と解明
宮崎良文=編
朝倉書店
4,000円(税別)