“なんとなくいい庭”をつくりたい  鈴木康幸/植繁
住宅の庭で雑木を池に向かって方向性を出して植えた。

現代の庭をつくる際、欠かせないアイテムとなった「雑木」。植木に雑木を使わない庭師はいないほど「雑木の庭」は浸透しました。しかし、「新緑がきれいだから」、「花が咲いてカワイイから」、「紅葉がきれいだから」といった、雑木の一面のみが評価されているように思えます。
私は、 その木が持っている幹のソリや方向性を意識して植えるようにしています。
地際から「気勢」の方向にぷっくり膨らみ、天端は天空にまっすぐ勢い良く向かっていく感じが好きで、庭をつくる際、その「気勢」を意識して植えています。ただ、単独で植えると曲がって植えたように見えるので、数本を組み合わせて植え込んでいます。
庭はモノ(樹木や庭石、構造物など)の気勢が一番大事だと思います。見えない気勢が空間の美しさと相まって、最高の庭になるのだと思います。

住宅の庭で雑木を池に向かって方向性を出して植えた。
住宅の庭で雑木を池に向かって方向性を出して植えた。

そんな思いで庭づくりに取り組んでいるため、植木(雑木)は、その植える場所で適切に生長するのであればどのような種類でもよく、選ぶ場合、姿、形に重点を置くだけとなります。

最近、「山採り」と言われる木が少なくなり、肥えた畑で生長した、どの方向から見ても美しい木が増えてきました。しかし私は、生きていくためにその方向にしか生長できない木、日差しを求めて突き進むように生長した山採りの木のハングリーさに魅力を感じ、そのような木を探すようにしています。
庭づくりの際、「なんとなくいいな」「なんとなく落ち着く」「なんとなく記憶に残る」という庭を目指し、逆に「モノの詰め込みすぎ」「考えさせる」ような庭は避けるべき、と私の師は教えてくれました。
私は、なるべく物事を広く見るようにして、施主から何か聞かれたら適切にお答えし、出しゃばらず、じっくりと自分の考える庭づくりに取り組んでいこうと思っています。現代のスピードには追いついていけないかもしれませんが、付かず離れず、思いのこもった、いろいろな庭をつくっていけたらと思います。           鈴木康幸/植繁

ベンチと植込みだけのシンプルな庭。デッキの床面にできる空間を意識した。
ベンチと植込みだけのシンプルな庭。デッキの床面にできる空間を意識した。

 

 

 

 

 

 

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